今年もまたニュースターが生まれましたね!
昨年に続き今年も審査員が変更になり、その採点内容も非常に興味深く、まだまだ余韻を楽しんでいきます!
では今年も、採点データをいろんな角度から見ていきたいと思います!
作成日:2023年12月24-25日
すみませんが、またまた申し訳エラそうに演者のみなさまの敬称略で、
勝手ながら分析させていただきます。
※ 点数・傾向に関しての分析であり、
審査や大会に関する批判の意図等はありません
M-1グランプリ 2023 採点結果
1st ラウンド
※審査員ごとの最低点を青字、高得点3つを赤字で示しています
私の好みで、上手から(松本さん側から)の表示順にしています。
では、早速ファーストラウンドの点数を見てみます。
毎年のように言っておりますが、
賞レースの勝ち筋に、
「個性的な審査員からまんべんなく高評価をもらうこと」があります。
(たとえ1人が5点低くつけても、他の6人が1点高くつければ取り返せるから)
今年も、見事にトップ3に現れていました。
3人から高評価をもらった令和ロマンが3位。
6人から高評価をもらったさや香が1位。
7人から高評価をもらったヤーレンズが2位
と、
3人以上から評価されるというのがそのままトップ3に残る結果になっています。
そういう意味で、どこかで誰かに刺さるボケをとにかく散りばめたヤーレンズのスタイルは賞レース向きとも言えます。
また、令和ロマンが高評価をもらった3人という数は少ないように見えますが、
圧倒的不利なトップバッターが3人以上から高評価を得ること自体が、2001年の中川家、2005年笑い飯以来、史上3回目の快挙です。
また、各審査員のトップ3評価が8組にわたっており、
各人でトップ3の好みが分かれたバラバラ審査でもあります。
この傾向はここ4年続いており、もはや得点が僅差で好み次第で順位が決定するのが常態化しています。
その中でも評価が割れた・割れなかったのは?
ここで、右端の偏差に注目してみます。
偏差はどれほど審査員ごとの点数に差が出たか。
小さいほど、評価が割れず、
大きいほど、評価が割れたという目安になります。
今年はなんと8組が偏差1点台。
つまり、今年は審査員間では得点があまり割れなかった事を示しています。
最高でもカベポスターの2.71であり、これは非常に低いです。
彼らは昨年も評価が分かれましたが、今年も低評価2人と高評価2人を同時にもらい、評価が分かれたと言えるでしょう。
なお、もっとも評価が割れなかった、
くらげは「審査員みんなが低評価」という残酷な結果が見えてきます。
点差をグラフで見てみる
次に、順位ごとに点差はどれほどあったのかを見ます。
2位と3位が8点差、5位と6位に8点差があり、ここが二つのラインでしょうか。
1~2位集団、3~5位集団と6位以下が形成されているものの、
しかし今年はキレイな階段状のグラフとなりました。
1stステージの結果だけで見ると、各々は僅差ながらもきっちりと順位付けされたと言えます。
気になる、新審査員の採点模様は?
※バリエーション=何通りの点数でつけていたか
得点偏差の最大は山田邦子さんの3.20ですが、
これもあまり大きな数値ではありません。
というのも、今年の審査員の偏差平均が2.26であり、
過去最小だった一昨年を下回り、今年が史上最小値となりました。
つまり、史上最も点数差をつけなかった大会と言えます。
また、新審査員の、海原ともこ姉さんがどのような審査をするのかに注目が集まっていました。
フタを開けてみれば、突出した点を付けるわけでもなく、それでいて差をつけないわけでもない、さらに8通りの点数で採点をこなしており、非常にバランスの取れた点数模様でした。
次に、大吉さんですが、
あまり差をつけない審査をする傾向はご本人も自負しておりましたが、
今年はやや点数のばらつきが上下し、従来よりも点数差をつけていました。
逆に、今年に限って少し点数差を縮めたのが塙さんでした。
そして、
松本さんは2017年からずっと9~10通りの点数バリエーションで、
明確に「順位付け」の意図を感じていたのですが、
今年にいたっては8通りの点数でした。
それほどまでに今年の各組が団子状態だったとも言えます。
代わりに、富澤さんが10通りの点数バリエーションであり、
きっちりと順位付けを行っていました。
最も、最終順位に近かった審査員は?
今年もちょっとお遊び。
2019年のM-1で、
松本さんの得点順位付けが最終順位と完全に一致していたことが話題になりましたが、
今大会でも見てみることにします。
完全一致した人は居ませんでしたが、
上位5組まで当てた塙さんが一番近いでしょうか。
下位5組を当てた大吉先生も近いと言えます。
この現象自体は偶然の産物であるため、近い人が良いとか悪いとか一概には言えませんが、ちょっと面白いので毎年調査しています。
7審5採用方式でも見てみる
こちらもちょっとお遊びです。
スキーなどでよく採用される、
最高点、最低点を除いた合計を適用してみます。
これによって、順位は変動することがあるのでしょうか?
ご覧の通り、順位はほぼ同じ(モグライダーが同率6位になったのみ)。
多少は差をつけた審査があったところで、
審査員の大体の意見は一致していたと言えるでしょう。
なお、今年のようにもともと団子審査の場合はあまり意味が無いです。
最終決戦
さて、今年も大波乱となった最終決戦はどうだったでしょうか。
※右から開票順です、上手からの書き方ですみません。
最後の1票まで勝者が分からなかったのが、
2005年のブラックマヨネーズ-笑い飯以来の史上2回目、
新M-1では初の現象となりました。
(もっとも、2005年当時は、同点になった時にゆっくりオープンするような演出がなかったので今回ほどドキドキじゃなかった)
驚いたのは、ヤーレンズ3-令和ロマン2の状態で礼二さんのところで一旦止まった事です。
4-2の優勝決定時だけでなく、3-3の同点に追いつくタイミングも止まるんだという。
つまり、優勝決定する可能性のあるタイミングで(決定しなくても)止まるんであろう、本当にどちらに転ぶか全く分からない演出であることがわかりました。
ここで、1stの結果をふりかえります。
さや香の見せ算が不発に終わった今、
ヤーレンズと令和ロマンの一騎打ちの様相となりました。
そこで、1stの得点がどちらが高かったかを見てみます。
邦子さんが、1stラウンドの高い、ヤーレンズへ投票。
大吉先生が、1stラウンド同点から、令和ロマンへ投票。
富澤さんが、1stラウンドの高い、ヤーレンズ。
塙さんが、1stラウンド同点から、令和ロマン。
ともこさんが、1stラウンドの高い、ヤーレンズ。
礼二さんが、1stラウンドの高い、令和ロマン。
そして、松本さんだけが、1stラウンドの低かった令和ロマンを「鞍替え投票」、
3点差を覆すほどの「逆転投票」でした。
また、同点だった2人がどちらも令和ロマンに投票している事から、
最終決戦で令和ロマンは1stよりも評価を上げたと言えます。
私的には、趣向の似ている礼二さんとともこ姉さんで票が分かれたのが、ある種の衝撃でした。
データ集
以下、今年みられたおもな記録やデータ集です。参考になれば。
トップバッターからの優勝
これは本編でも言ってましたが、
2001年第一回大会の中川家以来、史上2回目の快挙。
なお、トップバッターが最終決戦に残ること自体、
2001年中川家と、2005年笑い飯以来、新M-1では初めてのこととなる。
トップバッターの得点が史上最高点
令和ロマンが648点というのは、2021年のモグライダー637点を大きく上回る、トップバッター史上最高得点(7人審査基準)となりました。
史上最短芸歴優勝・結成からの優勝2番目
令和ロマンが結成6年目での優勝。
これはフットボールアワー(結成5年目)に次ぎ、霜降り明星(結成6年目)にならぶ結成歴2位記録。
なお、高比良くるまの芸歴5年8ヶ月での優勝は、
霜降り明星 せいやの芸歴5年11ヶ月を上回る最短芸歴優勝となった。
新M-1で4人目の20代王者
令和ロマン 高比良くるまが29歳での栄冠。
新M-1では、トレンディエンジェル たかし(29歳)、霜降り明星 粗品(25歳)、霜降り明星 せいや(26歳)に次ぐ、4人目の20代王者となった。
なお、芸歴制限の短かった旧M-1では20代王者は7人誕生している。
平均点が史上4位
今年の平均点91.37点は、M-1史上4番目の「高得点大会」
2019年の92.26点、2021年の92.09点、2022年の91.37点につぐ、史上4位。
しかし、トップバッターが残りつつも他の全員が高得点をキープするという、
点数よりも中身がハイレベルな大会だったと言えます。
審査員最低点が史上2番目の高さ
平均点こそやや横ばいながら、最低点が上がり続けている近年のM-1において、
今年の最低点は松本さんのつけた86点であり、これが2021年の87点につぐ2番目の高さ。
なお、これもトップバッター令和ロマンに90点をつけてしまったことによるもの。
全体のレベルとしては底上げされていると考えられます。
さいごに
個人的には、
今年も優勝候補・さや香が持っていくんじゃないかと思っていた今大会の最終決戦。
令和ロマンが綿密に準備していたネタで勝負し、
ヤーレンズがいつも通りに実力を発揮し、
1stトップのさや香は自分のやりたい漫才を貫いて散るという、
三者三様、全員が最高にカッコいい最終公演でした。
どういう展開になっても合わせられるように4本のネタを用意していたという令和ロマン。
戦略勝ちだとは思いますが、それを実現できる実行力、分析力、なにより努力が人並外れてると思います。
「今年はヨネダ2000に時代が追いつくかどうか」「追いつかないなら自分たちも優勝を狙う」と何かで言っておられたと記憶していますが、
ヨネダ2000さんがド天才なら、私は令和ロマンさんはド秀才か努力の天才だと思います。
昨年のM-1最終決戦のウエストランドに始まり、今年のキングオブコントのカゲヤマ、そして今年のM-1令和ロマンに続く、
「トップバッターでインパクトを残し、自分色に染める」
という、トップバッターなりの戦略というものが見えてきた気がします。
ますます各種賞レースが混沌とするであろう、今年のM-1トップバッター優勝の衝撃。
今後もお笑い界から目が離せなくなりました。
では、M-1ネクストデイで明らかにされた、松井ケムリさんの裏側でお別れしたいと思います。
ケムリ「松ちゃんサンキュー(ボソッ)」
くるま「松ちゃんサンキューって言うな」
今年も年末に、極上のお笑いをありがとうございました🙇🙇
長々と読んでいただき、ありがとうございました。
そいではまたー