新生R-1グランプリも3年目。
昨年と同一ルール・同一審査員で開催されましたが、昨年と何が違っていたのか?
個人的に見逃せない大会となりました。
遅ればせながら、採点データをいろんな角度から見ていきたいと思います!
作成日:2023年3月7日
毎度で申し訳ないですが、
またまた申し訳エラそうに「敬称略」で分析させていただきます。
※ あくまで点数・傾向に関しての分析であり、審査や大会に関する批判の意図などは全くありません
R-1グランプリ 2023 採点結果
1st ステージ
では、ファーストステージの点数から見てみます。
※審査員ごとの最低点を青字、高得点3つを赤字で示しています
まず、審査員が昨年と全く同じ5人、ルールも同じく8人中2名のみがファイナル進出。
5人審査なので得点差がつきにくい大会ではあり、
今年も前半からだんご状態の様相で始まりましたが、
ラスト2人が頭1つずつ抜けたという結末。
賞レースの勝ち筋の一つは、
「まんべんなく高評価」を取る事が挙げられます。
ひとりが3点低くつけても残り4人が1点高くつければ取り返せるから。
その勝ち筋どおり、
3人から最高評価を得た田津原理音が1位、
4人から高評価を得たコットンきょんが2位通過となりました。
また、最高評価2人ながら最低評価も2人という、
大きく評価が分かれたカベポスター永見は6位に敗退。
昨年のZAZY(高評価3人低評価2人ながら1位通過)がいかに例外的だったかが見て取れます。
史上初のバラバラ審査
そして赤文字に注目。
今年は、
出場者8人全員が、審査員だれかの高評価(3位以内)を得ていた結果になりました。
これはR-1史上初の珍事で、
8人に対して審査員の点数上位3人が完全に分かれていたということを表しています。
昨年よりは広がった得点幅
そんなバラバラ審査の1stステージでしたが、
得点を棒グラフでも見てみます。
3位から6位までが実に4点差にひしめくだんご状態ですが、
2位と3位も4点差。
つまり、1位と2位が少~しずつ抜けていました。
昨年の強烈な「上位4人だんご状態」に比べると、
今年は上位2人と中位以下で差がついたと思います。
また、1位と最下位の点数差も19点差であり、
昨年の17点差よりも2点だけ広がっています。
これは、
審査員の方々が昨年よりも差を付けた点数をつけていたのでしょうか。
それを読み解きます。
昨年と同様、上下差をあまりつけなかった採点
審査員ごとの採点傾向がこちら。
※「バリエーション」は「何通りの点数でつけていたか」
バカリズムさんの平均点が低いのは昨年と同じ。
バリエーションや得点偏差に多少の変化は見られますが、
大枠ではおおよそ変わったようには見えません。
得点偏差(ばらつき)の平均は2.02であり、
これは昨年の2.01とほとんど変わりません。
点数幅も5~7点差の幅で付けており、だんご状態になってもおかしくない傾向でした。
しかし、出場者ごとの点数偏差平均が昨年2.62に対し今年は2.32。
バラバラ審査ではあったものの、
3~4人の点数が近かったことが伺えます。
つまり、
審査員の採点傾向は変わっていなかったが、
昨年よりは審査員同士で評価が近かったことで、
わずかに上位と下位に差が広がったということです。
また、昨年はバカリズムさんが8人に8通りの点数をつけ「順位付け」をしていましたが、
今年は陣内さんが8通り。
バカリさんとザコシさんが7通りという幅で採点をしていました。
もっとも「平均的な審査」は誰か?
ちょっとお遊びです。
2019年のM-1で、松本人志さんの点数付けが完全に最終順位と一致していたことが話題になりました。
この大会でも見てみることにします。
完全一致どころか、惜しい人すら見当たりません。
上位3組「3連複」すら誰一人居ません。
史上まれに見るバラバラ審査っぷりがわかると思います。
ファイナルステージ
バラバラ審査の末、総得点の高かった2人が決勝進出。
そしてご存知の通り、2年連続1票差投票となったのがこちら。
出順は1stステージの早い順からという不利を覆し、
2年連続で「先攻」が勝利。
ここで気になるのは、1stでの得点順からそのまま投票されたのか?です。
つまり決勝のネタを見て「鞍がえ」をしたのかどうか。
その一覧がこちら。
バカリさん、野田さん、ザコシさんの3人は1stステージで点数の高い方を、
そのまま決勝でも高評価。
陣内さん、小藪さんが1st上位では無い方に「鞍がえ」
1stでの3-2評価がファイナルでも3-2評価という結果に。
2人の鞍がえが起こりつつ、3-2決着は本当に僅差だった事が伺えます。
なお、陣内さんだけが、2年連続でファイナルでの鞍がえをしており、
バカリさんだけが、2年連続で鞍がえをしていないという結果です。
決選投票はこういった鞍がえ状況を見るのも楽しいです。
勝因はなんだったのか?
個人的に思うことを言います。
昨年度は、斬新すぎるZAZYさんに対し、
むき出しの歌芸しんいちさんが勝利。
しかし、今年は王道コントのきょんさんに対し、
細部まで作り上げた世界観と斬新な見せ方の田津原さんが勝利。
今年も両極端でウケも同じくらいゆえに、審査は非常に難しかったと思います。
両者、どちらが優勝しても納得。
ただ、1つ田津原さんが勝っていたとすれば、
「苦悩の末にたどり着いた工夫」でしょうか。
私も田津原さんが「情熱型のフリップ芸人」だったことは存じてます。
表情と動きと大きな声で魅せるフリップ芸というジャンルでも、
一目置かれていた存在だと思います。
しかしそのスタイルをもやめ、カメラとカードを使った新しい
「フリップ芸の第二形態」がまずは評価されたと思います。
それに加えて、
衣装までカードバトラーの世界観に合わせたものを作り、
カードは手作り、キラキラカードや角度で変わるカードまで作り込み、
ピン芸人の苦悩が生み出したこだわりの数々が、投票した審査員の心を動かしたのではないでしょうか。
さいごに
今年もピン芸の最高峰、
その名に違わず、笑わせていただきました。
田津原さんの3分間は本当に短く感じました。
続きがもっと見たいです。
新生R-1グランプリも3年目になり、
「夢のある大会」となるべく、今後ますます期待しています。
今年も春先に極上の笑いをありがとう!🙇♂️🙇♂️
長々と読んでいただき、ありがとうございました。
そいではまたー